研究開発費の分類

研究開発の段階別分類

1 科学技術基本法では、「研究」および「研究開発」について、次のように定義している
①研究とは
 イ 事物、機能、現象などについて新知識を得るために、又は既存の知識の新しい活用の道を開くために行われる創造的な努力及び探究をいう。
 ロ 企業の場合には、いわゆる研究のみならず、製品及び生産・製造工程などに関する開発や技術的改善を図るために行われる活動も、研究となる。

②研究開発とは、「基礎研究、応用研究、および開発研究をいい、技術の開発を含む」と定義し「科学技術研究調査 用語の解説」において、それぞれについて解説している。

2 税法では、試験研究を、「基礎研究、応用研究、工業化研究」に分類し、解説書籍においてそれぞれについて解説している(法人税基本通達5-1-4、同逐条解説)

基礎研究

1 科学技術基本法
 特別な応用、用途を直接に考慮することなく、仮説や理論を形成するため、又は、現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる、理論的又は実証的研究をいう。
 自然界に存在する科学的な事実(理論、法則、物質、属性、性質、現象など)を発見・立証する研究です。その研究成果は「もとから存在するもの」なので、通常は研究成果の排他的な利用権を主張することはできません。(研究成果を他社に公開することは拒否できても、他者が自らそれを発見し、利用することを妨げることはできません。)。そのため、基礎研究の成果は一般に学術論文の形で発表されます。

2 税法
 自然現象に関する実験等によって、法則を決定するための研究をいう。

応用研究

1 科学技術基本法
 特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめる研究や、既に実用化されている方法に関して新たな応用方法を探索する研究をいう。

知られている科学的な事実(この場合は経験則を含む。)を、目的とする用途に役に立つかどうか調べる研究、あるいは既になにかに利用されているものを、別の用途に役立てられないか調べる研究です。「役立つように工夫する」ことも応用研究です。「科学的事実の利用方法」についての研究なので、その成果は一般に排他的な利用権(特許など)が認められます。

2 税法
 基礎研究の成果を具体的な物質、方法等に応用して、工業化の資料を作成するための研究をいう。

開発研究、工業化研究

1 科学技術基本法
 基礎研究、応用研究、および、実際の経験から得た知識を活用し、付加価値的な知識を創出して
  新しい製品、サービス、システム、装置、材料、工程等の導入
  既存の製品、サービス、システム、装置、材料、工程等の改良
 をねらいとする研究をいう。

 目的の用途に利用できることが確認できた科学的な事実を活用し、付加的な知識を創出して、実社会で実際に利用可能な形(製品、サービス、システム、装置、材料、工程、薬品など)にする研究です。
 実社会で利用するために、社会的規制の必要から行われる研究(品質、安全性や経済性の確保など)も含まれます。

2 税法
 基礎研究及び応用研究を基礎として、製品化やシステム化のめどがついた製品等の工業化又は量産化をするための研究をいう。

段階別分類の例

[科学技術基本法の例示(総務省統計局「科学技術研究調査 調査票記入上の注意」より)]
 電気関係
 基礎研究・・材料結晶の未知の電子構造、物性を明らかにする研究
 応用研究・・電子材料として要求される属性(高誘電率、高電子移動度、高熱伝導率など)を得るため
       の、各種の条件下(温度、組成、結晶構造など)における物性の研究及び材料合成方法の
       開発
 開発研究・・新しい材料を利用した装置の開発

医薬品関係
 基礎研究・・新しい化合物を創製してその構造・物性を解明し、生物に対する効果の探索を行う(スク
       リーニング)研究
 応用研究・・製品化の候補となる物質について、非臨床試験(前臨床試験)を行い、医薬品としての適
       応性(有効性、安全性、品質など)を確かめる研究
 開発研究・・工業的製造法の開発、臨床試験(治験)の実施

ソフトウェア関係
 基礎研究・・人の音声に最適な量子化(アナログ/デジタル変換)方法の研究、音声・画像データの数
       値解析に関する研究
 応用研究・・実用可能な音声・画像の認識・合成アルゴリズムの開発
 開発研究・・音声・画像の認識・合成プログラム、及びそれらを組み込んだアプリケーションの開発

会計基準の「研究開発」

1 研究
 新しい知識の発見を目的とした、計画的な調査及び探究。
2 開発
  新しい製品、サ-ビス、生産方法(新製品等)についての、計画若しくは設計
  既存の製品、サービス、生産方法(既存製品等)を著しく改良するための計画
   若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化すること。

会計基準の分類と科学技術基本法・税法の分類の、対応関係

1 会計基準でいう「研究」は、科学技術基本法・税法の「基礎研究」になる。
2 会計基準でいう「開発」は、科学技術基本法・税法の
  「応用研究」と
  「開発研究・工業化研究」の一部分(実務指針2⑧、⑨)
  とになる。
「研究開発」は、税務や会計において特殊な分野です。 税理士には、税理士法により、顧客に関する情報・機密について守秘義務が課されています。
研究開発に関する税務や会計は、当事務所の得意分野です。内閣府や文部科学省の政策立案担当の方々が当事務所を訪れたこともあります。

「試験研究費の特別控除(法人税額の特別控除)」制度を検討している企業は専門家である税理士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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